本記事を書いている人
本記事は専門家が著作権について説明したものではなく、日本語教育の中で著作権について注意すべきポイントやNG例について紹介しています。
著作権法第35条やガイドライン等を参考にしながら、素人がまとめたものですので、実際に違法性があるのかどうかという点については専門家の方にお尋ねください。
「学校なら著作権を無視して大丈夫」はNG
たまにこのような勘違いをされる方がいますが、これは絶対にNGです。
学校と言えども著作権は守らなくてはいけません。
ただし、学校が教育の中で使用するものは、ある制限の中であれば、無許諾で使用することができることになっています。
著作権について考えるべきポイント
使っていいかどうかの一つの判断ポイントとしては「これを授業で使ったら著作者の利益は減るのか」という点です。
教育のために一部利用することが許されるというだけで、著作物の利益を損なうことがあってはなりません。
たとえば、ドリルをコピーしたら本来売れるはずだったものが売れないので、利益は減りますよね。
逆に例えば表紙だけコピーして、「このドリルはおすすめなので本屋で買ってください」というようやり方であれば、著作者の利益になることなので、著作権の侵害には当たらないかもしれません。
著作権法で無許諾が許されるかどうかを調べる前に、これをやることで売り上げが減ってしまう可能性が少しでもあるなら使うべきではない、ということを念頭においてこれから見ていっていただけたらと思います。
日本語学校は著作権法35条の適用か
ガイドラインには著作権法第35条の適用は下記のように書いてあります。
条件
組織的・継続的教育活動を営む教育機関であって、営利を目的としないもの内容
○文部科学省が教育機関として定めるところ、及びこれに準ずるところ
例:幼稚園、小中高校、中等教育学校、大学、短期大学、大学院、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校、専修学校、看護学校などの各種学校、大学校、保育所○社会教育においては、上記教育機関と同等の年間教育計画を有するところ
×営利目的の予備校、私塾、カルチャースクール、営利企業の社員研修など
×学校開放などで教育機関以外の者が単に場所として学校を使用してい
る場合
これを見る限り、学校法人の日本語学校は各種学校として定められているため、教育機関に該当されるように見えます。
そのほか、大学や専門学校などは間違いなく教育機関に該当するでしょう。
株式会社の日本語学校については私塾とみなされることも考えられるので、35条の適用外と考えた方が無難かもしれません。
日本語ボランティアについては「組織的・継続的」な部分がグレーな感じがするので、適用外と考えた方がよさそうです。
著作権法第35条に適用される条件
著作権法第35条が適用される日本語学校だとしても、下記の条件もすべて満たさないといけません。
- 営利を目的としない教育機関であること
- 授業する人が複製すること
- 授業の中で使用すること
- 授業は対面であること
- 必要最低限の部分であること
- すでに公表されていること
- 著作権者の利益を害さないこと
- 著作権者の人格権を侵害しないこと
- 出所を明示すること
具体的にどんなことがNGなのかは下記にていくつか例を出していきます。
著作権的にNGな使い方
著作権的にNGな使い方を紹介します。
ここでのNGは無許可での複製であり、あらかじめ著作者に許可をとっていれば問題ありません。
教科書やドリルなどのコピー配布
学習者が購入して授業を受けることが前提になっているもののコピーは禁止です。
そのため、授業で使用するからといって、練習問題をコピーしたり、他のテキストの図解などをコピーして配布したりするのもNGです。
こういったテキストは必ず購入するようにしましょう。
ただ楽しむだけの映画鑑賞
日本語の授業の中で映画などを見せている方もいらっしゃるかもしれませんが、ただ楽しむだけの映画鑑賞はNGです。
映画の一部を見せ、書き取らせたりするのは、前述した条件を満たせば許されるのだろうと解釈できます。
ちなみに営利を目的としない上演は許されるようですが、それは勤務時間外に個人的に学生たちを集めて、映画を見るのであれば許容されるのではないかと解釈しました。
毎回同じ新聞をコピーして配布
たとえば、毎回の授業で同じ新聞社の新聞をコピーして配布したりするのは継続的利用ということになりNGでしょう。
当然、2回に1回だからOKということもなく、常識的に継続して配布していると思われるのはNGだという解釈でいたほうが無難でしょう。
授業以外での使用
授業以外のクラブ活動などで使用するのはNGです。
そのほか、クラス外の学習者が自由に閲覧できる状態にするのもNGです。
掲示板などへの掲示
授業中に黒板などに貼り付けておくのはOKでも、授業が終わっても翌日まで貼り出しておくのはNGです。
同様にホームページに掲載したりするのもNGです。
学習者の書いた作文を授業で無断公開する
これは公表されているかどうか、という点からNGになります。
学習者個人が書いたものでも、著作権は学習者にあります。
そして、それは公開されているものではないので第35条は適用外です。
そのため、作文の公開添削などをしたければ必ず学習者に許可を得てから、ということになります。
海外では著作権が適用されるのか
日本の著作権法は適用されなくても、ベルム条約や万国著作権条約などによって著作権が保護されています。
ちなみにこれらの条約に加盟していない国はほとんどありませんので、ほぼ全ての国で著作権はあると考えておくべきです。
日本語学習のテキストがある国では複製されて販売されているのも見たことがありますが、これは著作権の侵害にあたります。
同様に、日本語学習のテキストに改変を加え、半オリジナル教材を作っている海外の日本語学校も見たことがありますが、これも同様にNGです。
オンライン授業の著作権は?
オンラインでの使用は基本的にNGになります。
しかし、それでは教育におけるICTが難しくなるということで2020年4月24日から始まったのが「授業目的公衆送信補償金制度」です。
この制度を簡単に説明すると下記のような感じです。
授業目的公衆送信補償金制度
- 届け出をした後、補償金を支払う(令和2年度は無料)
- 著作物の送信は必要最低限の部分
- 送信の範囲は授業を受ける学生に限定
- 予習・復習用の著作物を送信OK
- 遠隔授業において著作物を送信OK
- 限定公開ならYouTubeもOK
- クラウドやサーバーを使って学習者と教材の共有OK
令和3年度からはいくらになるのか未定ですが、コロナが続けば無料になるかもしれません。
詳しくは「一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会 SARTRAS」のホームページからご確認ください。
著作権に関係がなく使えるもの
一方で著作権について考えなくても使えるものもあるので、ご紹介していきます。
自作の問題
自作問題の著作権は自分にあるため、自由に使えます。
時間を使うので毎回毎回やるのは大変ですが、問題作成は自分の勉強にもなるので、なるべくやってみることを僕はおすすめします。
ちなみに他人の著作物を改変・引用して作った問題の場合は著作権法が適用されるので要注意です。
著作権切れのものを使う
著作者の死亡してから70年経った著作物は著作権が切れることになります。(無名の場合は公開後70年)
そのため、青空文庫にあるような作品は著作権が切れているため自由に使えます。
夏目漱石の『こころ』を全部コピーして冊子にして配っても問題ありません。
ただし、作者の意を害す改変については同一性保持権の適用となり、孫の代まで相続されることになります。
そのため、『こころ』を改変して夏目漱石の大きく改変してしまうのは違法性が高くなりますのでやめましょう。
著作権フリーのもの
著作物の二次的利用を認めているものもあります。
たとえば最近でいうと2020年9月18日からジブリが公式サイトで映画中の画像400枚を公開しました。
「常識の範囲内でご自由にお使いください」とあるため、基本的に教育目的であればオンラインでも自由に使えると思って問題ないでしょう。
ジブリの画像はこちら
それから少し前だと2012年に「ブラックジャックによろしく」と言うマンガが二次的利用をフリーにしました。
商用でも複製を許可しているため、もちろん授業でも使えます。
まとめ:著作物は正しく利用しよう
そもそも著作権法は著作者を守るための法律です。
そもそも大前提として人のものを勝手に使うのはあまりよろしい行為ではないんですよね。
それを社会全体にとって有益な使い方に限定して特別に使わせてもらえるということになっています。
教育で使ってもいいのがこちらの権利なんだか、法律の範囲で自由に使わせろ!ではいけないんですよね。